医療法人明生会 関病院(以下、「関病院」)で臨床心理士として働く山﨑さん。
臨床心理士の仕事内容、臨床心理士を目指したきっかけなど、お話を伺いました(取材:2021年7月)
interviewee profile
山﨑 佳奈(やまざき かな)さん
新潟市出身・柏崎市在住。
関病院の臨床心理士。
■山﨑さんの勤務先、関病院ってどんな病院?
柏崎市郊外の広々とした田園風景に囲まれた自然豊かな環境にある精神科の病院。
地域に根ざした精神科医療の提供に努めている。
参考:関病院HP
■臨床心理士は常に学ぶ姿勢が求められる
資格取得後も5年ごとの更新が必要
―臨床心理士はどんな仕事?
心の問題や悩みについて専門的な援助を行う仕事です。
具体的には、患者さんの抱える問題、状況、性格を心理検査や面接、観察をしてどのような
支援をするか見立てを行ったり、カウンセリングを行ったりします。
私は病院に勤務しておりますが、臨床心理士が活動する場所は多岐に渡り、医療以外には、教育、司法、産業、福祉施設などさまざまです。また、患者さんを取り巻く地域、学校、職場を対象に働きかけを行うこともあります。自然災害に遭われた方へのケアやサポートを行うこともあります。
―臨床心理士になろうと思ったのはいつ? きっかけは?
思春期や青年期のころ、考え込んだり悩んだりすることが多く、他の人は何で悩みどのように対処しているのかが気になったんです。
もともと心理学に興味があり、短大で心理学を学んでいたのですが、心理学はどちらかと言うと、多数の人を見て調べてその現象を把握する学問に近く、それももちろん面白かったのですが、もう少し個人の心の動きや、悩み事を抱えている人にどんな支援ができるのかを知りたいと思い、そのあと臨床心理学を学べる大学に編入して大学院へ進みました。臨床心理士を目指したのは短大2年の時です。
―新潟市出身の山﨑さんが柏崎市の病院を選んだきっかけは?
私はいろいろな方と関わってみたいと思い、病院を選びました。病院にもよりますが、臨床心理士を雇っている所は大体2~3名ほどだそうで、人数枠はあまり多くはありません。そのため、就きたい病院があっても、すでに心理士が足りているところもありますので、その年によって異なります。この度は関病院での求人を見つけて、地域に開かれた病院だなと思いましたので、選んだ場所が柏崎市だったという感じです。
―臨床心理士になるには資格が必要?
必要です。(公財)日本臨床心理士資格認定協会が行う資格試験に合格する必要があります。試験を受けるためには、指定された大学院を修了して、受験資格を得る必要があります。
―資格取得後のスキルアップは?
臨床心理士の資格は、5年ごとの更新が必要です。研修や学会への参加や論文発表を行い、ポイントを獲得しないと資格の継続ができません。人の心を扱う職種ですので、資格取得後も学んでいく必要がありますし、自分だけでなくいろいろな人の意見や考え方を聞き、自身の臨床を磨いていくことになります。
―日々研修会などに参加している?
臨床心理士会などが企画した研修会に参加しています。また、研修でなくても同じ心理士の仲間と話したり、勉強会を企画して考えを深めたりしています。心理士はその職業柄あまり人に相談することができないので、仲間内で話しているときが楽しみでもあったりします。スーパービジョン(※1)で相談して、今後どのように進めていけばよいのか話し合いをすることもあります。
(※1)スーパービジョン:自分の担当するケース(カウンセリング)に関する指導を、より経験豊富な専門家や指導者から受けること。
―研修はリモート?
はい。コロナ禍でリモート研修が多くなりました。現地に行かなくてもリモートで参加できますので、気軽に参加できるようになりました。
スーパービジョンは実際に会って行うことが多いです。
―臨床心理士のやりがい・魅力は?
困り事や悩み事を抱えている患者さんと関わっていくうちに、いろんなきっかけをもとに少しずつ変化していく過程に付き添えるところです。例えば自分の感情や考えを抑えていたお子さんが、カウンセリングを通して自分を自由に表現できるようになったことがあります。それ以外にもお互いに話したり遊んでいく中でのいろんな気付きや体験を共有できることも面白いです。話を聞いていてこちらが考えさせられたり、患者さんから刺激を受けることも多いです。また、自分が人の人生に少しでも関わらせていただけることも魅力の一つだと思います。
―臨床心理士の仕事はどのような人が向いている?
多くの人と関わる仕事なので、人への興味がある人、関わることを楽しめる人かなと思います。また資格を取得したとしても、自分に必要な勉強や研修等で学んでいく必要がありますので、やる気がある、学ぶ姿勢があることも大切かなと思われます。
■勤務先のお話
依存症の治療や回復支援にも力を入れている
―関病院の魅力は?
小さい精神科病院ではありますが、患者さん1人1人のニーズに合わせて治療や支援に取り組んでいる病院です。
アルコールや薬物の依存症治療や回復支援などの各種プログラムに力を入れています。
他にも、他者との関わりが苦手な方や家にこもりがちの方を対象としたプログラムでは、緊張感をやわらげるため、貼り絵など物の共同制作を通して、自然と他の人との交流や場所の共有ができるような活動をしています。不登校のお子さんやネットゲーム障害のお子さんを対象としたプログラムでは、一緒にボードゲームなどを行いリアルな世界のいいところを感じてもらいます。
―関病院の臨床心理士は何人?
2人です。全体の職員数は70人くらいです。
―関病院の職員間の雰囲気は?
他の病院は、心理士だけの部屋が設けられていることがありますが、関病院は相談員や事務と同じ部屋で仕事をします。患者さんが受付に来たときの様子など、カウンセリングや心理検査場面以外の様子も聞けることがあるので、そういった面でも情報共有のしやすさや、私自身まだまだ半人前なのですが、優しく気さくな方や面白い職員さんばかりなのでいつも助けられています。働きやすい職場です。
■臨床心理士あるある
初対面の人の人物像は分からない
―職業柄、普段の生活の中で友達やご家族から悩みを打ち明けられる機会が多い?
そうですね。難しいところですが、心理士だから相談するというよりも、友達だから話したいという人の方が多い気がします。なので、機会はそこまで多くはないのですが、私も友達として聞いたり話したりしています。深刻な悩みの場合は、医療機関への相談を勧めることもあります。
―仕事とプライベートを切り替えるタイミングは?
職場から家に帰る時です。ただ、家で仕事のことを考えていても苦ではないので、家で今日の心理検査の結果はこうだったなとか、どんなふうに支援しようかなとか考えることもあります。
―初対面の人の人物像が分かる?
心理士というと『もしかして、私の心分かるの?!』と聞かれることがあります(笑)。ですが、基本的には相手のことは分からないというスタンスで関わっています。相手の方にはいろんな体験をされて人生を歩んでこられた背景がありますので、関わっていく中で少しずつ知っていくことの方が多いです。
―ラジオやテレビの人生相談のアドバイスに対して私ならこう答えるのに、と思うことは?
あまりないですね。相談者と回答者の関係の中で生じる言葉だと思うので。
むしろ人生相談のアドバイスをしている方の言葉を聞いて「なるほど~」と思うことがあります。
■柏崎での生活のお話
小さな子があいさつをしてくれた
―柏崎市の休日の楽しみ方は?
友達とカフェに行きます。
―カフェ巡りはした?
巡るほどまだ行けていません。おすすめのカフェを教えてほしいです。
―柏崎市の魅力は?
新潟市より海が近くて気分転換がしやすいところです。柏崎の海は、見晴らしがよくきれいでした。微小貝というきれいな海だけにいる貝が柏崎にあると聞きました。花火もきれいだと聞いたので、新型コロナウィルスの感染状況が落ち着いたらぜひ見に行きたいと思います。
あと、小さいお子さんと近所ですれ違ったときに「こんにちは!」ってあいさつをしてくれるのがすごい!と思いました。人付き合いの良さ、交流のしやすさを感じました。
柏崎で採取された微小貝
■夢の実現に向けて
インターネットの世界だけではなく自分で体験を
―進路に迷っている学生に対してのメッセージを
学生の時は時間に余裕があるので、いろんなことに費やせる時間があると思います。ですが時間はあっという間に過ぎてしまうので、今しかできないことを体験・経験してほしいです。
インターネットの普及で、自分が体験しなくてもインターネットの中で知ることができますが体験に勝るものはないと思います。また何が良くて何が悪いということはなく、その人にとって何らかの意味が含まれていることもあります。意味はその時分からなくても、あとからついてきたり分かったりすることもあります。私の恩師も『人生で経験することに何一つ無駄なことはない』と仰っていました。
進路というと、自分の今後を決める重大な選択というような印象もあると思いますが、それを考えることはもちろん大切なのですが、一度の選択で何もかも決まってしまうわけではありません。一歩踏み出して外の世界を見てみる、自分の足跡を増やしていってみてください。
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