「越後バナーナ」がかわいくて私たちも販売店さんも子どもを見るように成長を見守っています
躍動する人case2
シモダ産業株式会社
常務取締役・営業企画部長 霜田 真紀子さん
営業管理部・環境営業課長 霜田 久子さん
鋳物資材製造・産業廃棄物処理を手掛けるシモダ産業の霜田姉妹。「雪国・新潟で、焼却炉の排熱を利用したサーマルリサイクルによるバナナを育てる」という前代未聞のプロジェクトに成功。
▲写真左:霜田真紀子さん、写真右:霜田久子さん
■越後バナーナ誕生の背景
柏崎でバナナを作ることになった経緯を教えてください
真紀子さん:当社は70年前に鋳物資材製造業で創業し、鋳物砂の再生事業をやってきました。平成30(2018)年に新しく焼却事業を立ち上げたのですが、その焼却炉から出る熱を利用するためにシモダファームを立ち上げて、バナナ栽培を行っています。
排熱利用を考えていた同じころ、社長がフィリピンで食べた完熟のバナナがとてもおいしくて、それを柏崎で食べたい、雪国でもあのバナナを食べたい!と言って、バナナ栽培を提案しました。周りから、イチゴやトマトがいいんじゃないかという意見もあったのですが、社長が絶対に譲らなかったので、どちらかというと根負けした感じで(笑) プロジェクトがスタートしました。
バナナとなると、何から始めたらいいのか分からないですね
真紀子さん:苗を販売しているところが見つかっても、社長から「おいしいバナナでなければだめだ」という要望があったので大変でした。いま育てているのは、グロスミッチェルという品種で、一番おいしいと言われて広まっていたのですが、一度は病気で絶滅しかけたという奇跡のバナナです。いろいろ探して、苗を育てている岡山の事業者にようやくたどり着きました。
久子さん:グロスミッチェルはもちもちとした食感の濃厚な味わいのバナナです。しっかりと甘みが詰まっている感じで、一般的に売られているキャベンディッシュとは本当に食感が違います。形も丸みを帯びて、ずんぐりむっくりとした感じですね。
真紀子さん:栽培を始めるにあたっては、栽培責任者が岡山に3カ月間修行に行って、栽培法を学んできました。それでも、岡山と新潟では気候も違うし、日照時間、気温、土の質から違うので、同じ育て方で育つかというとそうではないので、様子を見ながら新潟に合った育て方を探っています。
道路からハウスを見ると、大きなバナナの木のシルエットが見えてびっくりしました
久子さん:植えた苗は、膝丈くらいの高さだったんです。最初に見たときは、正直なところ「こんなに小さいんだ」と思いました。
真紀子さん:柏崎は風が強いので、冬の風に一番苦労します。バナナに合わせて、ハウスも高さが5メートルと高いので、強風だと飛ばされるかと思ったと栽培担当は話していました。バナナは気温25度以上を保つことで成長して収穫ができるので、冬の間も25度以上を保たないといけません。その暖房は焼却炉の熱でまかなっています。
実ったバナナを見た感想は
真紀子さん:やっぱりかわいいです。花が咲いて、結実してから3カ月以上かけてゆっくり大きくなっていくので、本当に育てている感覚です。私たちだけでなく、販売店さんも「子どもみたいだ」って言ってくださって、いつの間にかみんながバナナを「この子」って呼び始めて、慈しんでいます。
バナナは完熟の直前ギリギリまで樹上で熟させて収穫し、1週間ほど追熟させて市場に出ます。角が取れて丸い形になっているのも、ギリギリまで熟させているからなんです。それによって糖度が増します。もともと皮が薄い品種なんですが、熟させることでさらに皮は薄くなります。農薬不使用なので、皮も食べることができますよ。
▲バナナの収穫は、手作業で行われています!
■柏崎の地域活性の役に立ちたい
販売先はどうやって探したのですか
真紀子さん:ルートが全くない中で、手分けをして飛び込みで県内の青果屋さんやお菓子屋さんにお願いして回りました。皆さん、新潟でバナナを作るということに驚かれていましたね。でも、新潟初のバナナということを面白がっていただいたということと、私たちは越後バナーナを通して地域活性のお手伝いをしたいというテーマを持っていて、そこに対して共感してくださった皆さんが、取り扱いをしてくださることになりました。地域活性化のお役に立ちたいと言ってはいますが、それより先に、私たちが地域の方々に助けてもらった感じです。
バナナの葉などで和紙も作るそうですね
真紀子さん:当社は全ての事業部において循環をテーマにしているので、できるだけ廃棄するものを無くして、循環させていきたいです。バナナを育てる過程で、バナナの株の葉柄(ようへい)(古皮)を摘まないといけないのですが、それで何かできないかなと思いました。また、バナナは高さ3メートルくらいの株に実がなって、それを収穫すると、株を伐採しないといけません。切ると同じ根続きの株から芽が出てくるので、次はそれを育てます。そうすると今後、収穫の度に株も廃棄物になってしまいます。
それで、高柳の門出和紙に相談したら「有機物は何でも和紙にできるよ」と快くバナナ和紙の製造を引き受けてくださいました。試作では味のある紙が出来上がりました。これからそれで何が作れるか、考えるのも楽しいですし、こうした地域のつながりがありがたいですね。
これからの展望をお聞かせください
真紀子さん:越後バナーナは東京に出荷するというよりも新潟県内で買ってもらいたいと思っています。県外の方には、県内を通して購入していただきたい。そういう形で県外の人から召し上がっていただいて、越後バナーナを通じた交流人口を増やしていけたらいいなと思っています。
もうひとつは、微力ではあるのですが、越後バナーナを通して柏崎に環境、経済、社会の循環を生み出していきたい。社会的な貢献という点では小・中学生への出前授業をしたり、コロナが落ち着けばハウスを見学してもらったりして、環境や経済、食育といった面で学んでもらえたらと思います。バナナも等外品が出るのですが、それをお菓子に使ってもらうという流れは食品ロスの勉強のきっかけになると思うんです。越後バナーナで地域の皆さんと一緒に、柏崎を盛り上げていけたらと思っています。
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