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革新的な日本酒造りで、柏崎の個性を発信


日本酒が身近にある地元を自慢に思ってもらえたらうれしい

躍動する人case4

阿部酒造株式会社 6代目製造責任者

阿部 裕太さん

文化元(1804)年から続く阿部酒造の6代目。これまでの固定観念に縛られない発想で日本酒を展開し、注目を集めている造り手。


■酒造りを楽しむことが自分たちのスタイル

阿部酒造の酒造りについて教えてください

うちの蔵は「楽しいものづくりをしましょう」というのを大前提・テーマにして酒造りをしています。一般的に、酒蔵に対しては、この蔵イコールこの味・このお酒、という固定されたイメージがあると思うんですけど、うちの蔵はそれがないことが特徴だと思っています。この味を目指すというのではなく、蔵人全員でものづくりを楽しんだ先に味がある、ということです。うちの蔵人は全員県外出身で、酒造りをしたくて入ってきた者ばかりです。それもあって、ある程度現場を任せて、今いるメンバーで造って生まれた酒が阿部酒造の酒ということです。

私が蔵に戻ってまだ5年。今は進化を続けていかなければいけないとき。それに年間2万本くらいしか製造できない小さな蔵なので、まだ、これがうちの味という境地には達していない。それならば、作り手やその年によって味も変わっていくということを売りにした方が、面白いしみんなが幸せだと思うんです。それで、うちのお酒には瓶の首の部分にビンテージシールで年度を表している商品もあります。


ブランドによって、違う酒蔵が作っているのかなと思われるくらい味は違います。日本酒の面白さは、水と米と米麹だけでめちゃめちゃ味の幅が出せるところ。僕はその面白さを最大限に伝えたいと思っています。だからスパークリングワインのような瓶内二次発酵のお酒もあるし、日本酒の造りを逸脱したようなスターシリーズというお酒もあるし、食事の最後の一杯にデザート感覚で飲める甘口のお酒なども用意しています。




自由な感覚での酒造りですね

自分が異業種にいたから、そういうアイデアが出てくるのかなと思います。最近、我々の業界も外から入ってくる人が増えてきて、彼らのものづくりは独創的なので、いま日本酒業界は面白いですよ。

新潟は淡麗辛口という一大ブランドを築いてきたので、逆に動きにくい部分はあると思います。でも地域イメージがあるのはすごいことで、なかなかできない。シャンパンのシャンパーニュと同じですね。うちは新潟というエリアにあるからこそ、淡麗辛口を当蔵なりの表現で作ったお酒もあります。でも、その年のお米の出来具合によって、銘柄が変わるという点が、うちらしいところですね。

■柏崎を伝えていく酒づくり

田んぼがある地域の名前がついたお酒もありますね

圃場別シリーズという展開のお酒です。最近、力を入れています。自分が柏崎に戻ったきっかけが関わっているんですが、柏崎は原発のまちであることは、食べ物を作っている側からすると決してポジティブなイメージではない。工業のまちというイメージも強い。一方で、山間部では、皇室献上米が作られていて、クオリティの高いものを作っているエリアなんですね。お米を原料としている我々としては、それをもっと伝えたいと思って、お酒を通じて柏崎(刈羽地域を含む)を別の視点から伝えたいなと思ったんです。

その圃場別シリーズは小清水(こしみず)から始まって、海に近い圃場の上輪新田(あげわしん

でん)、赤田(あかだ)、安田鳥越(やすだとりごえ)と出してきました。柏刈地域(※1)は、土地によって土の成分が違うし、当然合う品種やお米の質も変わってくる。お米に表情があるのなら、酒の作り手としてそれを伝えられたら面白いと思っています。

(※1)柏刈地域:柏崎市・刈羽地域の相称。


発売後、上輪新田の農家の方が「上輪新田っていうお酒を造ったと聞いたんですが」と突然訪ねてきて「上輪新田はすごくいいところで、昔から良いお米を作れると思ってたんですよ」と話しながら、お酒を買っていってくれたんです。すごくうれしかったですね。刈羽地域の赤田もそうでした。赤田の人にお酒について問い合わせが入ったらしくて、赤田の人がお酒を買って配ってくれたんです。おらが自慢という感じで地域の人がすごく喜んでくれて、やってよかったなと思いましたね。

この地域の人たちが「うちの実家は近くに酒蔵があって毎日酒粕を料理に使ってたよ」とか「うちの地名を冠にした酒があるんだよ」というふうに、自慢にしてもらえたらうれしいなと思うんです。柏崎の人と話をしていると、みんな自慢が無いって言うんです。柏崎の人が自慢できるものを、酒蔵の自分たちが作るとしたらどうしたらいいんだろうと考えた中で、地元を冠したお酒を造って、外に発信していけたらいいと思ったんです。

僕はお酒を通して柏崎を外に伝えることができる立場なので、今度も続けていきたいです。酒ってひとり歩きができるのがいいところ。今、うちのお酒は奄美大島や沖縄にも行っていますが、そんなに遠いところまで行くってすごいことですよね。お酒の利点を生かして、柏崎をいろいろなところに伝えていけたらいいなと思います。


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