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米山の麓の集落に移住し、米山トウキの復活に挑戦


トウキの独特の香りや成分を生かして谷根(たんね)の特産品に育てたい

躍動する人case5

GOOD GRIND FARM

前畑 彰洋さん

霊峰・米山周辺に自生する野草・米山トウキ文化を復活させるため、谷根集落で妻の愛美さん・農家の池田さんと共にトウキ栽培に挑戦中。

▲写真右から:トウキ栽培を一緒に行う池田寿一さん、前畑彰洋さん、妻の前畑愛美さん


■米山トウキとの出会い

前畑さんと米山トウキの出会いは

彰洋さん:明治大学農学部の在学中に人工光型植物工場(※1)の研究をしていて、収益性の高い題材を探していたとき、柏崎の谷根に自生するトウキという植物があることを教えていただいたのがきっかけですね。僕は柏崎出身ですが、トウキのことも、谷根集落のことも知りませんでした。それで谷根に通って、野生のものをサンプルにして研究を始めました。

日本でトウキというと、根を漢方に使う植物として漢方の世界では知られていますが、柏崎では生薬というよりは、かつて米山の山頂で米山トウキが飾りとして販売されていた歴史があります。米山に登ったらそれを買って、家の玄関に厄除け、魔除け、あるいは芳香剤として飾られていました。一定世代より上の方は、トウキというと米山を思い出すと思います。


(※1)人工光型植物工場:気象に左右されない完全に閉鎖された空間の中で、蛍光灯やLEDなどの人工光で野菜を作る工場。


現在は谷根に移住して、本格的にトウキ栽培をしていらっしゃるんですね

彰洋さん:研究をする中で、将来は自分でトウキの栽培、販売までやっていきたいという思いになりました。また、野菜を作ることにも興味があったので、野菜の栽培とトウキの栽培の両方をやりたいと思ったとき、谷根はそれができる場所だったので移住してきました。

一般に研究されているトウキは栽培用の品種。ここのトウキは野生のもので、今まで栽培してきた方がいないので、イチからやっていくのが大変でした。野生のものから種を採って、それを地道に増やしているところです。今一緒にトウキを育てている池田さんには、研究を始めたときから手伝っていただいて、僕が大学生の頃は畑で育てて観察もしていただくなど、とてもお世話になっています。

トウキを栽培することで、もともとの魔除け・厄除けという無くなってしまった文化を復活できたらいいと思っています。もうひとつは、食用などでの販売を目指したいですね。根は薬事法の関係で販売できないですが、茎と葉は販売できます。食用としてはハーブ、スパイスとしても使えそうですし、化粧品や入浴剤といった分野にも幅広く展開できたらいいなと思っています。

谷根集落での農業と暮らし

谷根での暮らしはいかがですか。

彰洋さん:僕には合っていると思います。もともと自然が好きなので、そういう仕事ができるのもありがたいですし、見どころが多い集落だと思いますね。川があり、山があり、海も近いし、皆さんがすごく丁寧に暮らしている。畑は草刈りなどが丁寧にしてあって、引き継がれてきたものを大事にしているんだなと感じます。


池田さんは、若い人が谷根に移住してきて、いかがでしたか

池田さん:私は地域が少しでも発展すればいいかなと思っていて、こうしてトウキを栽培したいという人が現れて、喜んで協力しています。会社勤めしていたときは谷根を出ていました。でも、定年になったら何をしたらいいかといろいろ考えて、谷根に戻ろうかと。女房と子どもに聞いたらいいよというので、平成元(1989)年に家を建てて戻ってきたんです。最近は、もうちょっと若かったらなと思いますね。やりたいことがいっぱいあります。


彰洋さん:池田さんの存在は心強いですね。農学部で学んだとはいえバイオ科学分野で、現場の知識はなかったので、野菜づくりを教えていただいたり、池田さんは山も詳しいので山菜について教えていただいたりしています。


愛美さんはいかがですか

愛美さん:谷根はすごくいいところです。私は東京出身ですが、今まで経験したことのなかったことがたくさんあります。谷根に来た時、いろんな人が歓迎してくれて、良くしてくれたことがうれしかったですね。

池田さん:二人が結婚するときは、谷根の集落も黙っていられないから、みんなでお祝いしましたよ。

彰洋さん:谷根の赤岩ダムで挙式をして、ここ(店舗)で披露宴をして、最後にコミュニティセンターで谷根の皆さんに祝っていただきました。


トウキを食べるときは、どんな料理で

彰洋さん:最初は天ぷらにしました。食べやすくて、あとからトウキの香りが抜けるような感じでおいしいです。ソースにしてみたり、魚にかけてみたり。刻んでカレーに入れたり、餃子に入れたり、すごくおいしいですね。

池田さん:私は料理にはしませんが、毎日束ねてお風呂に入れています。体が温まる感じがしますね。

前畑さん:新潟薬科大学の私学ブランディング事業の一環として米山トウキの成分分析を行

い、高品質である大和トウキと成分比較をした結果、有効成分が多く含まれている可能性が示唆されました。当面自分たちは、乾燥したものを販売したい。お茶や、乾燥スパイスとして使っていただけるようなものを提案したいですね。


ショップは、野菜の直売をメインに、シルクスクリーンのプリントや染物、ハンドメイド作家の作品を販売していて、隣にはスケートパークもあります。ショップがあることで、いろいろな入り口があるというか、スケボーに来た人が野菜を買って帰るなど面白い流れがあります。谷根には釣り堀やギャラリーもあって、幅広い年齢層が来てくれる。可能性のあるエリアだと思います。


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